サンデー毎日


カレー「糸力」

歯の音を感じるカレー
良かれ悪しかれ「らしさ」を出す

 某通信販売の雑誌に掲載されて名が知られたイトリキカレー。地酒自慢の居酒屋「糸力」の主・宮下雄治さんが生んだこのカレーを食ベるため、他府県からもマニアが集まる。
 和、洋、中なんでもござれの約150もの品書きから、客はあれこれ頼み、主と女将は喜々として注文を受ける。そして客の大半は仕上げにカレーを食べて帰る。「糸力」は、そういう一風変わった居酒屋である。主のカレーヘの執着は洋食を志していた27年前からのこと。その後和食に転じ、板前をしたあと、12年前に故郷の富士吉田に今の店を開いた。
 地元はうどん屋の多い町で、旨いうえに安い。だから人の足はおのずとそちらに向く。うどんに勝つ名物を作りたい。主はインド人になったつもりでカレーのことを考えたという。
 結果、胸焼けがするので小麦粉は入れない。スパイスを一般の約2倍量、それも噛んだ時に香りがパチッと弾けるように何種類かは粒のまま使う、という糸力カレーが生まれた。
 この店のカレーは噛むカレー。タイカレーをイメージしたココナッツカレーはカルダモンとピンクペッパーが、マドラスカレーはマスタードの香りが、奥歯からロ中に広がる。
 「プチプチとかギュッギュッとか、歯の音を感じるカレーです。美味しいものはどこにでもある。でも俺は良かれ悪しかられ自分の顔、『糸力らしさ』を料理に出したいんです」、繊細にして豪快。カレーの味は主にも似て爽やかにスパイスが利いていた。